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「この本を正しく読んだ人はまだ居ないのではないか」と語る吉田和明氏を招き、昨年の大ベストセラー『蛇にピアス』(金原ひとみ)をテキストに読書会を開催しました。吉田氏は、吉本隆明、太宰治、三島由紀夫など数多くの作家論・書評を発表している評論家です。2002年に発表された著書『文学の滅び方』は大きな反響を呼びました。吉田氏はまず、『蛇にピアス』が純然たる純文学であることを強調されました。
「僕は『文学の滅び方』のなかで、純文学の定義を、それを書いた動機やその人を突き動かしたものが、金銭的・地位を得るためなど外部にあるのではなく、その人の内部(自身の感情や思想)から沸きあがった、どうしても書かざるを得なかったものだとしました。この定義に当てはめると、『蛇にピアス』は明らかに純文学なのですが、その点でも本書は一般的に誤解されている側面もあり、今回はそれを正したいと思いました。本書のラストに漂う諦めや言いがたい哀しみは、そもそもが非常に純文学的なテーマです。」
そして、本書の小説としての面白さについて語ります。
「この物語の根幹にあるのは、シバ、アマ、ルイの三角関係です。アマのスプリットタンに惹かれて関係を結んだルイは、彫師のシバと知り合います。ルイは、アマと同じ龍の入墨を入れてもらうつもりだったのですが、シバの麒麟の入墨を見て『これ入れたい』と言う。この時点ではルイはシバへ愛情がある素振りを見せていませんし、最後まで直接的にシバを愛しているとは書かれていない。けれど入墨のやり取りでルイの心変わりは暗喩されていれています。また、ルイの背中に彫られた入墨の紋様。ルイの依頼を受けてシバが考案した図柄は、龍(=アマ)を麒麟(=シバ)が飛び越えていこうとする図柄です。ここでシバへのルイの心変わりのみでなく、シバからルイへ芽生え始めた愛情も表現されています。」
と、入墨というセンセーショナルなモチーフが単に現代風俗をなぞるツールではなく、必然性があるメタファーとしてあることを解説されました。この他にも、本書中「バランスが悪いんだよ」という台詞からシバ、アマ、ルイの本当の関係、それらを含めた小説の構造の巧みさ、文章の巧さなどを指摘されました。
「残念ながら、芥川賞受賞時の選評ではこのようなことが語られていませんでした。『若者の風俗』や『一種の純愛』という言葉では括りきれない面白さがこの小説にはあります。皆さんには、まず自分の目で読み判断することを忘れないでいただきたいです」と、吉田氏は締めくくりました。
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